多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)に漢方薬

2020.6.4

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS:polycystic ovary syndrome 以下、PCOSと略します。)

PCOSとは、排卵が上手く行われないために月経延長(希発月経)や無月経、不正出血、不妊症などが起きる疾患です。また、男性ホルモン値の上昇で多毛、にきび、肥満といった症状が現れることもあります。

生殖年齢女性の5~10%にPCOSが認められると言われていて、まれな疾患ではありません。月経不順に悩んでいる女性が最近増えているそうですが、PCOSによるものも多いのではないかと思います。

多嚢胞性卵巣(PCO)であっても自然に排卵、妊娠する場合もあるので、気づかない場合もあります。

しかし、多くの場合は不妊、月経不順、無月経に悩まれて婦人科を受診して検査によって診断されます。

女性不妊の原因の10~20%はPCOSが占めており排卵障害だけでなく、卵巣内の栄養を複数の卵胞で吸収するために、卵子の質がよくないともいわれています。

 

PCOSの診断

1.月経異常(無月経、希発月経、無排卵周期症)

2.多嚢胞性卵巣(2-9mmの小卵胞が10個以上みられる)

3.血中男性ホルモン高値またはFSH<LH↑

これらを満たした時にPCOSと診断されます。

海外では男性ホルモン高値と肥満、多毛、にきびといった身体所見が多くみられますが、日本ではむしろ、やせ型の方が多く、肥満や多毛の症状があるのは全体の20%ほどしかありません。

 

PCOSと高プロラクチン血症

PCOSの10-30%は高プロラクチン血症を合併していると言われます。

プロラクチンは下垂体から分泌されるホルモンで、乳汁分泌などに関わります。

プロラクチンの分泌が亢進していると、出産していないのに乳汁が出たり、高温期が短くなる黄体機能不全になったりします。

高プロラクチン血症自体が排卵障害を引き起こす可能性もあります。

 

PCOSとインスリン抵抗性

PCOSの中にはインスリン抵抗性のある方がみられます。

血糖を下げる働きのインスリンの効きが低下しているため、将来的に2型糖尿病へ移行する可能性があります。

また、妊娠した時に妊娠糖尿病に注意する必要があります。インスリン抵抗性のある場合は、インスリン抵抗性を改善するメトホルミン投与で排卵障害が改善するケースもあります。

 

PCOSの西洋学的治療

・肥満がある方は、減量や運動療法を行います。

・インスリン抵抗性があれば、メトホルミンを投与します。

・経口排卵誘発剤(クエン酸クロミフェンなど)や性腺刺激ホルモン剤(注射)で排卵を誘発します。注射では副作用の卵巣過剰刺激症候群(OHSS)に注意が必要です。

・腹腔鏡下で卵巣に穴をあける手術があります。薬の反応がよくなったり、自然に排卵できるようになったりします。効果は1年ほどです。

 

PCOSに漢方薬

中医学からの視点からPCOSは、瘀血(ドロドロの古くなった血)と痰湿(ネバネバした余剰な水分、老廃物)が卵巣の周りにこびりつくことで、卵巣の膜がかたくなってしまっていると考えます。

瘀血を取り除く活血薬と痰湿を取り除く化痰薬を使っていくことで卵巣が柔らかくなっていき、スムーズに排卵ができるようにしていきます。

腎虚や卵子の質をよくするためには補腎薬を使っていきます。

高プロラクチン血症のある場合は炒麦芽などを併せて使っていきます。

気滞がある場合や自律神経、性腺軸を調整するために疏肝薬を使うこともあります。

漢方薬は、西洋治療とも併用して使うことができますし、治療効果を上げることに繋がります。

 

生活の養生

瘀血や痰湿を生み出す生活習慣を見直していきましょう。

・夜更かしはやめて十分な睡眠時間を確保する

・飲み過ぎ食べ過ぎは控えてバランスの良い食事を心がける

・脂っこいもの、お菓子などの甘いものは痰湿を作るため食べ過ぎない

・過度の飲酒は控えて、タバコは禁煙する

・ストレスを上手く発散させて溜め込まない

・適度な運動で汗をかき余分な水分や老廃物を排出する

・シャワーだけで済まさず、湯船につかる

 

PCOSでお悩みでしたらLINEまたは予約フォームよりご相談くださいませ。

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